自閉症児は、健常児から活気に満ちた刺激を受けて成長し、健常児は、仲間として共に学ぶ生活の中から、多様性を受け入れる心、友愛の心、生きた福祉の心を自然に育みます。また、自閉症児のひたむきに努力する姿を見て、努力の大切さを学ぶ、これが本校の混合教育です。
●混合教育とバディ
本校では、入学をきっかけに自閉症児の存在を知り、関わりをスタートさせる健常児が大半であり、その健常児も中学時代に素行面、学力面などに問題を抱えており、不登校など情緒的な不安定さを抱えている場合が多くあります。そのため、自閉症児のみならず、健常児への対応も十分に留意しながら、混合教育の推進を図っています。
その対応策の1つとして本校が導入し、積極的に取り組んでいるのが、バディシステムです。バディとは、健常児と自閉症児による1対1のペアであり、このバディを一つの単位として学校生活の様々な活動に取り組ませていくのがバディシステムとなります。このバディシステムこそが、生徒たちに混合教育を理解してもらう大きな役割を担っていると考えています。そして、そのバディシステムを形成する上で、最も重要な時期であり、教師が細心の注意を払いながら慎重に混合教育を進めていくのが、1年次の4月~7月の導入期です。混合教育は、3年間という長い時間をかけて進めていくものには違いありませんが、この4ヶ月間の取り組みが大きくその後の3年間を左右しますのでご紹介します。
4月 『自閉症を理解する』 ・1年生研修・縦割り清掃・部活動開始
5月 『お互いを知る』 ・スポーツ大会練習・交流給食開始
6月 『協力する』 ・スポーツ大会
7月 『お互い理解しあう』-バディの確立- ・林間学習・盆踊り
①1年生研修
新入生に対して校外の研修施設を使い2泊3日で行われる研修ですが、この中で自閉症に対しての初めての理解教育を行うことになります。自閉症に関する知識をほとんど持っていない外部からの生徒に対して、本校のインクルーシブ教育に関するDVDを見せることや、卒業生を招いて在校時に体験した自閉症児との交流の話、さらに教師からの話を通じて、自閉症についての大まかな情報をつかませます。また、実際に初めて過ごす共同生活の中で自閉症児の特異な行動を目の当たりにして驚いてしまう生徒に対しては、その場面を教師が好機ととらえ、適時話をしていきます。健常児の中には、この時期から自閉症児とのバディの基礎作りが始まる生徒もおり、教師側は、集団生活の中で、一人ひとりの健常児が自閉症児に対する接し方を把握し、自閉症児との相性を探り、今後のバディ作りの参考にしていきます。
②様々な学校行事
1年生にとって6月に行われるスポーツ大会は、自閉症児を知る上で大変貴重な体験となっています。3人4脚やムカデリレー、学年対抗の応援合戦など全員が協力しなければならない競技種目が多く、どうやって自閉症児と向き合えばいいのか、バディとは何かを考える場ともなります。この健常児が自閉症児への対応について悩む時期が教育的に見れば好機ともいえ、教師は具体的な対応法や自閉症の特徴などの情報を明確に示しながら指導を進めていきます。こうした指導を加えていくと、合唱コンクールなどの行事を通じて、ひたむきに練習し本番に臨む自閉症児の様子から努力することの価値といったものを学ぶことも多いようです。
③宿泊学習(林間学習・・・導入期後は、スキー教室、修学学習等)
宿泊学習ではバディで同部屋になり数日間生活を共にします。林間学習やスキー教室では、日頃校内では見ることのない、荷物整理や入浴、就寝時の様子も見られ、友だちについて再発見する場ともなっています。また、健常児はこの経験を通じて自閉症児の保護者の苦労がよく分かると話しています。それだけに、健常児にとって負担を感じやすい活動といえます。そのため、教師は頻繁に声をかけながら、ひとりで負担を背負わせないように配慮していきます。そうした宿泊学習の集大成ともいえる3年次に行われる修学学習では、まるで兄弟姉妹のようにバディのことを理解し思いやって行動する場面が多く見られ、バディの確立・熟成が感じられます。
④交流給食と縦割り清掃
水曜日の給食は、生徒からの要望でどのクラスでも食べてよいことになっています。バディ同士が互いのクラスに集まって給食を食べた後は、昼休みを共に過ごす様子が見られます。また、毎日昼休みに行われる縦割り清掃では、日頃のバディと離れ、清掃の為の新しいバディを組み、他学年の先輩や後輩との関係を新しく身につける時間ともなっています。
|