武蔵野東学園広報 第46号
平成27年(2015年)9月30日発行

180-0012 東京都武蔵野市緑町 2-1-10
Tel. 0422-52-2211㈹ Fax. 0422-53-1090
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  子どもたちの教育的ニーズに寄り添う

武蔵野東教育センター所長 計野 浩一郎

目  次

 P.2 幼稚園
 P.3 小学校
 P.4  中学校
 P.5  高等専修学校
 P.6  教育センター
 P.7 学園総合
 P.8 お知らせ

    『東だより』 バックナンバー

 教育センターの所長に就任して5カ月になります。当教育センターでは本年度より2歳から高校生まで受け入れるようになり、のべ600名の受講者で無事にスタートすることができました。これも学園保護者の皆様をはじめとした多くの方々のご理解やご協力のおかげだと感謝しています。
 ところで、私は武蔵野東小学校の特別指導クラス(現CDEクラス)1年生の担任として学園で勤務し始めました。昭和54年の養護学校(現特別支援学校)の義務化が始まった翌年のことです。その当時、「混合教育」や「特別指導クラス」の名称について、ある専門家から「障害者と健常者を分けた発想で差別的な表現だ」と言われたことがありました。キヨ先生は「誰もが同じ環境の中で教育を受ける権利がある」という考えで創立の時から障害のある子どもを受け入れたという経緯があります。障害のある方と定型発達の方が存在しそれらの人々をインテグレーション(統合)するという考え方ではなく、インクルージョン(包含・包摂と訳されます)の考え方であることは明白です。このコンセプトは、今世界の常識となっている先進的な考え方でした。特別指導クラスの名称についてもこの考え方の流れから「大きな集団では、持てる力を発揮することが難しかったり、学びにくかったりする子どもたちだから、小さな集団で、得意なことを伸ばし、弱いところを丁寧に指導していく必要がある。だからこの名称にした」と聞いたことがあります。これは、現在の「障害者」から「支援を必要としている子」や「特別な教育的ニーズ(Special Educational Needs)のある子」につながる言葉と同義の考え方です。先の専門家の方もそうですが、偏見というのは、恐怖や誤解、無理解という堆肥の中で育つものであると思います。学園の創立期に批判してきた人々が多く存在していたということは、多くのよき理解者に恵まれていたということの裏返しでもあると思います。そういう方々に支えられて、現在の学園の姿があるのです。その後、文部科学省は平成19年に特別支援教育を始めて、養護学校を特別支援学校、特殊学級を特別支援学級にそれぞれ名称を変更することになります。
 また、学園は平成13年に「AGEシステム」によってアセスメントし、目標を立て、指導して評価するサイクルの取り組みを始めます。このAGEシステムは今まで実践してきたことを整理し、明確にしたものですが、その目的は、「家庭と学校との密接な連携、個に応じた指導の発展、子どもの将来をえがく指導」です。これまで以上に保護者の方々との共通理解のもと、子どもたちへの指導目標が明確化し、情報の受け継ぎに切れ目がなくなり、効率の良い指導が展開されるようになりました。その中の一つとして教材の共有化の取り組みがあります。
 当教育センターができ、外部の方々の支援をする中で学園の各園校とは多少違った視点からのプログラムの試みがなされています。教材においても各園校の教材も取り入れながら、より視覚化したり、細分化したりしたものを電子化して整理しています。また、四谷学院と共同で教材開発を行うことで、これまで、学園の先生方が創意工夫して作り上げてきた膨大な量のプリント教材等を精査し、整理することで、より個別の子どもたちの教育的ニーズに応えられるようになりました。それらの教材は、先生方が共有して使用できるようになります。このような取り組みは、特別支援教育がはじまり、個別の教育計画や校内委員会などが教育の中に位置づけられ、チームで一人ひとりの子どもを見ていく時代となった教育機関ではあっても、どこにも見られません。
 このように学園は、時代とともに進化しつつ、常に先を見据えながら教育を進めています。まだまだ課題はありますが、特別な教育的ニーズのある子どもたちや保護者の方々のために創立者の理念を守りつつ、時代の流れの中で必要なものを先取りしていく視野の広さを持っていきたいと思っています。
 皆様のご協力をこれまで以上にいただければ幸いです。

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