東だより 武蔵野東学園広報 第4号 H12(2000).7.18発行


教育を考える   1学期のズームアップ
学園長 野田 彰

 子どもたちにとって、4月は緊張と疲労の月と言えるかもしれません。通園・通学や新しい教室・担任や学習内容や友だちなど、環境が急変したのですから無理もありません。しかし子どもたちは、希望に燃えて新しい刺激に対応し、目標を掲げて頑張っています。その姿は実に頼もしく頭が下がる思いです。
 4月から5月にかけての連休が終わり、日ざしが強くなり木々の緑が濃くなると、植物の光合成は最盛期を迎えます。この時期に年輪の形成が活発化するのですが、子どもたちもそれに負けず摂取・形成・充実に向けて一段と加速されていきます。
 植物にはめきめきと生長して数日で大きな変化を見せるものもありますが、子どもの場合はどうでしょうか。時には成長どころか停滞・退歩の如くに感じることがあるかもしれません。このような時には、内面の見えないところで質的に何かが変わりつつあると考えてみることも大切なことです。

 子どもにぐっと近づいて時間をかけて観ていくと、少しずつ理解しやがて納得する様子が、つまり開眼・脱皮の過程がわかってきます。次は、先生との対話によって疑問を解決した東小学校1年生の例です。
 給食指導の一環として生活の時間に「好き嫌いをなくそう」というビデオを見せた時、ある子どもが「好き嫌いをしてはいけないってへんだよ。」と言い出したのです。「嫌いって言っちゃいけないけど、好きって言うのもいけないみたいな言い方はへんだ。」と言うのです。なるほどと思って話し合いをした結果、「好きと言ってそればかり食べちゃ駄目、嫌いと言って食べないのも駄目。どちらも同じに食べないといけない、ということなんだね。」と子どもたちは納得したというのです。(5月31日の1学年通信より)
 この事例には、教育への沢山の示唆が含まれています。その一つ二つを取り上げてみますと、先ず、子どもながらにも言葉に疑問を感じて納得いく論理を構成し、疑問を解いて言葉の意味を認識していることが挙げられます。これは見事です。
 もう一つ挙げるとすれば、話し手と聞き手との立場の違いについてです。話し手は伝えたいことを用意していた言葉を次々に投げかけます。興奮している時は早口になったり、時には主語を抜いたり簡略化したり、結論を急いで飛躍した語り口になる場合もあります。「好き嫌いはいけない」は理由を述べずに結論を短く表現した言葉です。一方聞き手は次々に飛び込んでくる予期しない言葉を咀嚼しながら受け入れ、聞きとったことを反芻して理解するわけですが、それには時間がかかります。
 話し手と聞き手では、こんなに違うのです。表現(発信)する人と、それを受信して理解する人とのやりとりは、四六時中、親と子や教師と子どもの間で繰り返されていることですから、心しなければなりません。

 私たちは、1か月のことや学期の学習の成果を、思い出に残る行事などを連ねて総括することが多いのですが、日々のことや学習の一こまをズームアップして評価することも忘れないようにしたいものです。
 ほどなく1学期が終わりますが、子どもたちの日々の頑張りとこまやかな導きの実りが見られることを祈るばかりです。

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BHSジャズバンド&タイガー大越
ライブ イン 武蔵野東学園

 5月29日、ボストン東スクールからジャズバンドの生徒13名を中心とする一行が来日し、翌5月30日には学園見学会や中学校で交流が行われました。

 一行は13歳から21歳までの生徒のほかに保護者10名、ファンテイジア校長はじめ6名の教職員、そしてジャズトランペッターのタイガー大越さん。本来の来日目的は6月3日に旭川で催されたジャズフェスティバル(Jazz Month in Asahikawa・旭川市立大雪クリスタルホール)にボストン東のジャズバンドが招待され、演奏するためでしたが、先に東京に立ち寄ることになりこの交流が実現したのです。

 ボストンのあるマサチューセッツ州と北海道は姉妹州として今年提携10周年を迎え、一行はマサチューセッツ州知事の親書などを携えて北海道庁へ表敬訪問をするなど公的な親善使節としての役割も兼ねています。また一行に同行したタイガー大越さんは神戸出身の日本人で、22歳の時に日本を離れて以来28年間ボストンに在住する、世界的に有名なジャズトランペッター(現在バークリー音楽大学教授)です。BHSとの縁は5年前、BHSから発表会の招待状を大越さんが受け取ったことから始まり、ジャズバンドの活動に共感して、以後非常に親しく折りにふれて指導にあたってくださっています。  BHSのジャズバンドは創立3年目の'89年に結成、初めはトランペットとトロンボーンの3本から始まりましたが、今では数々のレパートリーを持つバンドに成長しました。。見学会では約80名ほどの一般の見学者と小学校の全児童の前で2曲を披露、タイガー大越さんも参加しての力強く息のあったハーモニーに盛大な拍手がおくられました。小学生にとってジャズは少しめずらしい音楽に映ったかもしれませんが『A列車で行こう』は知っている児童もあり、リズムにのって楽しんでいたようです。
 午後は中学校の生徒と交流、密度の濃い思い出を残して翌日旭川へと発ちました。3日の本番は千枚の前売りチケットが完売、600人入る会場に立ち見が出るほどの盛況で、ジャズバンドのメンバーは大いに実力を発揮したとのこと。ジャズを通じての日米交流が、これからも続くことを期待したいと思います。

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中学校の運動場改修 人工芝オムニコートに

 4月から5月にかけて中学校の運動場の改修工事が行われ、砂入り人工芝(オムニコート)の運動場になりました。これは25ミリの人工芝を敷きつめた上に、特殊な砂を約120トン敷き入れた構造で、人体の膝や腰に最も適した弾力を保持しています。完成してみると、いわゆる人工芝というイメージからは遠く、細かな砂が大量に芝の目を埋めていることから、どっしりとした感触が足裏に伝わってきます。この改修によって、活動盛んな中学生の運動量にも十分堪える運動場になったわけで、2学期、スポーツの秋には生徒たちのますますの活躍が楽しみです。

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トピックス

盛会だった国際シンポジウム
   「中南米の自閉症児・者のために」

 ―世界に広がる『生活療法』

(422() 1時~5時 津田ホールにて)

 中南米のウルグアイと学園との関係は、'92年にウルグアイ自閉症児父兄協会の会員(自閉児を持つ親御さん)の方が学園を見学に来られ、帰国後に『生活療法』の本をスペイン語に訳すなど『生活療法』を自国で実施すべく活動を始めたことから始まりました。その後JICA(国際協力事業団)による教員派遣事業が実現し、'94年から今年にいたるまでに学園の職員(のべ12名)がウルグアイに派遣されて自閉児の教育施設で指導にあたったり、ウルグアイからの研修員(のべ6名)が学園に来て研修をしたりしています。最近ではパラグアイ、ニカラグアからも指導の要請があり、中南米にも『生活療法』は広まりつつあるのです。
 ウルグアイ希望自閉症児教育財団・国際後援会日本支部の主催による今回のシンポジウムには、ウルグアイ駐日大使バロン氏や前ウルグアイ大使石和田氏夫人も来賓として来場、
100名を越える参加者がありました。第1部では武蔵野東学園(日本)、ボストン東スクール(アメリカ)、モンテビデオヒガシ(ウルグアイ)、聖山ベデスダオリニチブ(韓国)から、ビデオやスライドを使用しての『生活療法』実践報告があり、国は違っても各国の文化にあわせた『生活療法』が根付いていることが示される興味深い内容でした。
  第2部では、モンテビデオヒガシのフェルナンデス校長、ボストン東スクールのファンテイジア校長、武蔵野東技能高等専修学校の清水校長による各国の自閉症児教育の現状の問題点や今後についてのパネルディスカッションが行われ、互いの情報交換をするとともに、これからの協力を確認し合いました。
 また別室にパネル展示されていた各校の歴史やそれぞれの国の様子も参加者に好評でした。
  今回のシンポジウムは、『生活療法』を実践している学校が、これからは武蔵野東学園を中心に連帯していく時代に入ったことを思わせるものでもありました。なおこの国際シンポジウムは、来年も開催される予定とのことです。

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学園同窓会から マイクロバス

 高等専修学校同窓会に中学校同窓会が合流して学園同窓会となり、今年で4年目を迎えます。

 5月7日に開催された第3回総会で同窓会の役員から、学園にマイクロバスを寄贈しようという提案があり、満場一致で承認されました。学園では日頃生徒の部活動の遠征や、外国からのお客様がある度にレンタカーを利用していましたが、活動が多くなるにつれ、幼稚園バス以外のバスが一台あると便利だということになり、今回の寄贈に至ったわけです。学園の名が入った29人乗りのバスは、中古ながら丁寧に整備されており、これから大いに活躍しそうです。

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《目次》

教育を考える
  学園長 野田彰

【学園総合】
BHSジャズバンド&タイガー大越

中学校の運動場改修

【トピックス】
盛会だった国際シンポジウム
「中南米の自閉症児・者のために」
―世界に広がる『生活療法』―

学園同窓会からマイクロバス

 

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モンテビデオヒガシ

マリアナ・フェルナンデス校長(


聖山ベデスダオリニチブ  
崔在繕先生


ボストン東スクール
ロバート・ファンテイジア校長
()


武蔵野東技能高等専修学校 
清水信一校長