1年間よく頑張りました

Heart to Heart21 平成24123日発行

今年も年の暮が近くなってきました。一年を振り返ると、やはり日々通ってくれた子どもたちの頑張りを褒めたい気持ちが湧いてきます。時にはぐずるお子さんもいたかも知れませんが、それを上手になだめすかすなどして、通い続けてこられた保護者の皆さんにも感謝です。節目を乗り越えながら継続することこそが次なる力を生み出していきますが、それを根気強く行うことは決して簡単ではありませんね。成長期の子どもが送るこの一年という歳月には、人生山あり谷ありのような展開があるというのも大げさではありません。認知力やコミュニケーションの力をつけて、社会に適応する能力を高めていこうと努力する彼らの一年間は、周囲が思う以上に苦労と喜びとが交錯する中身の濃い年月です。この日常の中で、弱いところが矯正されたり苦手なことに慣れたりもする。また、好きなこと得意な活動で気持ちが膨らんだりもする。いろいろな想いを重ね、それを彼らなりに昇華していく中で心が鍛えられていくのですね。

ところで、北原キヨ先生はある雑誌の取材の質問に、自閉症の子たちに出会って「とてもきれいな目をしている―きっと中身があるんだ、と私はそう信じたんです。」と話しています。このきれいな目という言葉は著書にも出てきますが、いわゆる目が生きていて覚える力、感じる力があるということです。この子どもたちの中身を信じる姿勢が、その後の学園の治療教育を形成していく基本の視点になっています。この子どもたちの内に隠れている心情を感じることは、教育センターでも日常的にあります。たとえば、幼児のグループはクラスで作った作品を職員室に見せに来たりします。担任に促されてちょっとだけ私の前に作品を差し出す子がいます。まだことばも話せずフラフラとして、まるで上の空で視線も定まりません。視線を合わせることが苦手なのはこの子たちの特徴ではありますが、目の前にいる私を意識している様子はその子から感じられません。私が「これ作ったの?亀さんかな。上手だね!えらいね~」などとほめます。でもとくに反応はありません。その子が、帰り際にジーっと私の目を見つめています。自分をほめて心を向けてくれた見知らぬ人の内面を、視線をじっと向けて探っているかのようです。ですから、普段本人に接している人のことはよく見ていて、本人なりにしっかり受け止めていることが、このことからだけでも察せられます。彼らがこの先どんなことに興味を持ちどんなことを身に付けて、将来どんな風に自己実現を図っていくのだろうと、よく思いを馳せます。その子に応じた自立の力を、今後ともじっくりときめ細かく促していかねばなりません。

 この年末年始には、子どもたちはまた楽しい経験を積むことかと思います。新年を迎えるに当たっては、ぜひお子さんに年の始まりを喜ぶ心を教えてあげていただきたいと思います。ご家族共々、どうぞよいお年を迎えられますように。

 

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