サッカーW杯に思ったこと

Heart to Heart14平成22710日発行

 今回は少し子どもたちから離れた話になりますが、W杯における6月の日本サッカーチームの活躍は、むし暑い梅雨を一時忘れさせてくれるかのようでした。滅多にテレビ観戦もしない私ですが、選手たちの決死と言える戦いぶりが、さらには敗戦後の反響が、私の心を十分に揺さぶってくれました。

ここでは海外の反響について記してみます。中国メディアの記事で「日本代表の選手たちは、試合後必死に涙をこらえながら、応援のために会場に駆けつけたサポーターに感謝のお礼をした。その瞬間、日本サッカーの魂と意志を感じ取ることができ、心が震えるのを感じた」とありました。台湾の方は「あなたたちの活躍は忘れない。あなたたちのスポーツ精神に心から感動した。素晴らしいゲームをありがとう。“決してあきらめてはいけない”ということを教えてくれてありがとう!」と熱く語っています。またフランス人の記事紹介では日本人サポーターについて取り上げていました。敗戦の後の彼らは笑顔でさばさばとして周囲を幸せな気持ちにさせる雰囲気だったこと、彼らから聞かれた言葉は憤りではなく「この試合を見れただけで来た価値があった」などの類だったこと、また98年のフランス大会で、試合観戦後に持参した袋にゴミを拾って観戦席をきれいにしてから退場する日本人サポーターの姿が、フランス人に衝撃を与えたことも紹介されていました。

ワールドサッカー大会は当然自分の国が勝つことが最大の目標です。また同じアジア地域の人たちが日本を応援し、勝利を喜ぶというのも頷けます。しかし私が本当にうれしく思うのは、この大舞台で示した日本の人たちの深い精神に、勝ち負けを超えて感動した人たちがいるということです。選手らが応援席に頭を下げている姿に、万感の思いをもつ。その勇気ある戦いぶりに、あきらめてはいけないと心打たれた人がいる。観戦のために現地入りした日本人サポーターまでが、彼らにしてみればごく自然な言動で他国の人に衝撃を与えたりしている。私のみならず、こんな話題に心弾む感情を抱く人は多いのではないでしょうか。日本人の根底を流れる精神性には、世界の人々に影響を与えるすばらしい個性があると私は思っています。その輝く精神性を彼らはW杯で示してくれました。

 私たちの日常の中でさえも、目を見開くような驚きや感動、発見や願いなどに熱くあるいはすがすがしく心を動かす瞬間は、目に見えないエネルギーが渦巻いて人の心の世界を変え創造していくのではなかろうかと感じます。それは他の人からの刺激であったり、努力の末の瞬間であったり、自然と対峙する環境の中であったりとさまざまでしょう。しかし私たちが意識するならば、そうした瞬間はいつでもどこにでも口をあけて待ってくれているはずです。あらゆる職場の環境、家庭生活、スポーツやハイキング、さまざまな趣味、またそこに集う人たちの交流の場などすべて、それぞれが新たな明日を生み出す可能性を秘めた時空間ではないでしょうか。他に多くを学んだり、感動し感謝の念を抱いたりする人は、きっと他の人たちにも何かを感じさせ、刺激を与えている人であるに違いないのです。

    さて私たちの子育ての場も、どの環境にも負けないほどの刺激とエネルギーに満ちています。そして常に何かを学び互いに何かを与え合っている場でもあります。純粋でエネルギッシュな子どもたちとの心通わす環境は、かけがえのない創造の場と言えるでしょう。まもなく夏休みを迎えますが、ぜひこの一夏をお子さんのよい経験学習の時ととらえていただきたいと思います。そして保護者の皆さんもどうぞ意識してリフレッシュを心がけ、健康的に過ごしてくださることを祈ります。

 

  

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