心に余白を残して

Heart to Heart11平成21711日発行 

 新年度も7月を迎え、教育センターもあと2週間ほどで夏休みに入ります。
 つい先日まで、当教育センターのロビー付近には恒例となった七夕の竹が3本据えつけられ、子どもたちの願いをこめた短冊がその枝に飾られていました。暑さを感じる頃に竹に結ばれた短冊。誰もが、「ああー、七夕が近づいたのだな」と思います。都会では、自然の多い地方ほどに季節の移り変わりを身体で感じないかもしれませんが、一般に日本では、四季の移り変わりやそれに伴う折々の行事を通して、一年間の流れを身体に刻み込んでいるような気がします。『○月になると△△祭りがやってくる。』と、なじみの行事などを予測できることが、長い間人々の心のどこかに安心感をもたらしてきたに違いありません。

自閉症の子どもたちには、予定がわかっていないと極度に不安になる子どもが多いと言われますが、これは至極当然の心理であると言えるでしょう。その日の予定がわからないことには動きようがなく不安になるのは、私たち誰にとっても同じことです。

このように考えると、お子さんにその日のことやある程度の期間のことを予測できるように配慮してあげることは、むしろ当然なことであると気づきます。一ヶ月も前から親戚の結婚式の出席のことを毎日子どもに言い聞かせた結果、当日はじつに物静かに振舞ってくれたなどという成功談を、よくお母さん方から聞くことがあります。

この夏休み中には、サマープログラムに出席するお子さんもいますが、各家庭で休み中の予定を本人の希望を取り入れながら決めてみてください。視覚的な工夫をして子どもと一緒に予定表を作り上げることは、とても有意義なことに思われます。

ところで、私たちの周囲は雑多な情報であふれかえっています。暑さに加えて煩雑な情報を無差別に受け入れていることは、精神衛生上もよくない気がします。

どこまでの情報を必要とするかはそれぞれですが、有効な情報を適切に取り入れていくためには、常々頭の中を整理しておく必要があるのではないでしょうか。脈絡のない情報をどんどん脳の中に溜め込んでいくことは、常識的にも健康的ではないでしょう。私たちが否応なしに情報過多な世界に住まわざるを得ないのであれば、意識的にその処し方を考え、ある程度シンプルな生活観を身につけておくことが賢明であると思われます。頭のフォルダを整理して余白を残し、いつでもタイミングよく書き込める感度を保っておくということです。

 ストレスの多い生活の中で基本的におすすめしたいことの一つに、不安恐怖を煽られたり卑俗に過ぎる情報などに過度に入り込まないようにするということがあります。この類の人のうわさやマスコミ情報などは、えてして繰り返し流されます。何度も繰り返される情報やニュースの、人の心に対する影響力というものは案外大きいものです。このような役にも立たない負の想いを自らかきたてて増幅させてしまうことが、人の心の動きにはよくあることだからです。家の中を掃除したり、もはや使わなくなった衣類を処分したりすることで気持ちがすっきりするように、多少強引にでも、意識をシンプルに保って心の余裕を作り出すことは、現代に生きる私たちの生活のよき知恵であるような気がしています。

 時折に吹くさわやかな風を親子一緒に楽しめるような、活動的で健康的な夏を過ごしてくださることを願っています。

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