第38回   皆様からコメントを頂きました     『技術面の裏話』  

                                                                                                      宮沢 薫/小学校 図工科教諭

 

 今回は、炭田晶弘 様(鞄券ィ建築事務所)よりお寄せ頂いた、壁面アートを裏で支える技術面についての話をご紹介させて頂きます。

 これまで詳細な紹介はできませんでしたが、このすばらしい意匠を裏で支える技術面の裏話をご紹介しておきたいと思います。

 
技術面での検討は、意匠と同じくらい難渋をきわめました。タイルと言うよりはレンガのような重さの物を壁に張り付けるため、既存の技術マニュアルがあてにならず、全てをゼロから構築していくことになり、ほんとうにさまざまな問題の検証が必要になりました。最終方針がまとまったのは「これ以上は待てない」という、施工スケジュールぎりぎりのタイミングだったのです。これら一連の技術開発の根底には、「この意匠をスポイルしたくない」という思いがあり、それはワークショップの熱意と成果がそのまま現場関係者に伝わったからだと思います。

@  タイルの下地には「押出成型セメント板」というパネルを用いて建物本体構造に影響のないものにしました。

A  パネルとパネルの継ぎ目がレリーフのデザインに影響しますので、パネルの大きさはできるだけ大きくして継ぎ目が少なくなるようにしました。またパネル継ぎ目の周辺は「幹タイル」の形状が継ぎ目を目立ちにくくしています。

B  パネルが大きいと地震や風圧に対して弱くなりますので、細かい計算を繰り返しました。縦横方向の地震時のパネルのゆれ寸法を計算しパネルをルーズホール形式で固定し、内外方向へは設計風速時でのパネルのたわみを計算して、これに追従できるように接着モルタルやタイルの曲げせん断強度を検証しました。

C  これらのためにタイルの目地幅が10mmと大きくなるので、特殊目地を採用してレリーフ全体の一体感を出しました。目地幅10mmから逆算して、レリーフタイルの形状にもフィードバックが必要でした。

D  タイルは厚いほうが彫りが深くなりデザイン的には迫力がでますが、重さが重くなり安全面でのリスクも多くなります。またタイルの平面寸法もデザインや重さに大きく関係するほか、レリーフ以外のタイル面との調和も考える必要があります。タイルが小さくなると相対的に目地部分が増えて、「樹木」の意匠が損なわれる懸念もありました。これらを解きほぐしながらのタイルの基本寸法の決定には、とても時間がかかりました。

E  タイルの重さが重いので、そのまま貼り付けても接着モルタルが乾くまでにずり落ちてしまい、意匠が成立しなくなります。そのため下地にステンレス金物(L型アングル)を装備し、タイルの重さを受け止めています。ステンレス金物自体の強度確保のためにも、数多くのアイデアが多角的に検討されました。

F  また万一のタイル落下を防ぐよう、タイル1枚1枚の裏にステンレスの針金が取り付けられ、1個1個が先ほどのステンレス製の金物にあけられた孔に結わえられています。ステンレス金物が目地と重なるため、両者の技術調整のためにもさまざまな案が検討されました。

G  タイルは焼成すると収縮変形しますが、特殊な彫り形状のタイルがどの程度収縮するかは未知数でした。試作品を作り、約8%の収縮率で比較的安定していることが検証されました。したがってレリーフタイルは前後左右上下に8%づつ大きい形状で彫り加工され、焼成後に所定の寸法誤差内に収まるという、信じられない職人技です。厚みの違いによる収縮率や乾燥率の違いも相当心配されましたが、丁寧に工程を進めてくださったおかげで、無事全数を収めることができました。

 

< データ >

 レリーフのあるタイル壁面全体の大きさ

 7565mm × 8490mm (= 64.22685u)

■  
レリーフの大きさ(額縁を含んだ外形サイズ)

 6595mm × 7090mm -(= 46.75855u)

 タイル1枚の・・・

 大きさ 210×90×50
 重さ  
2.079 s
 比重  
2.20
 
吸水率 2.75%    (以上全て平均数値です)

■  
レリーフタイルの総枚数 

 2300枚(額縁タイル含む、レリーフ周囲の部分は非算入)

■  
レリーフタイルの総重量 

 2.4t(推定)2.079×2300×係数0.5 2390 s)

 

(炭田 晶弘 /鞄券ィ建築事務所  
          北原記念館設計・壁面アートプロジェクト 記録担当)

 

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