年長 お泊り保育を終えて① 


けむりがでてる…
火だ!ついたー!!
舞い上がる火の粉

「おもいで、できたな…」

森の夜空に巻き上がる火の粉を見上げながら、そうつぶやいたAちゃん。そのつぶやきが、風に乗ってふわっと聞こえてきたかと思うと、私の右手がぎゅっと強く握られました。Aちゃんは、私から右に3人目。そのつぶやきを聞いて隣の子がぎゅっとしたのがはじまりか、つぶやいたSちゃんがぎゅっとしたのがはじまりか…それは分かりませんが、ぎゅっという確かな手のつなぎは、隣へ、隣へ…と、燃え上がる炎を囲んだ私たち皆へとつながっていきました。
あの、静かな森の夜、美しい月明かりの下でたしかにみんなの手と心が強くつながって、気持ちがひとつになりました。

Aちゃんは出発前、お泊り保育に少しの不安を抱えていたそうです。それでも保護者の方は、「きっと楽しいよ!」「思い出いっぱいつくっておいで!」と励まし、明るく送り出してくださいました。1日を楽しく過ごして、夜になり、少しまたさみしい気持ちになって、おうちのことを思い出す…。キャンプファイヤー場へ向かったのは、ちょうどそんな時間でした。「楽しみだなー」「ファイヤーマン、もういるかな」「となりにいようね」「○○(弟の名前)泣いてないかな」…これからはじまるキャンプファイヤーに期待を膨らませていたり、お友達のぬくもりを求めていたり、おうちに思いを馳せていたりと、それぞれに色々な気持ちを抱えながら、みんなで坂道を下っていきました。
キャンプファイヤー場が見えてくると、小さな火がいくつかついていて、先に集まっていたクラスのお友達の顔を赤く照らしています。また、ところどころにお友達が輪を作っていて、その中心では、お手伝いにいらしてくださったお父様たちが熱心に何かをしていました。合流すると、「何をしているの?」「何を見ているの?」と、先に集まっていたお友達に聞く子供たち。その声が自然とささやくような声になっていて、夜の森がそうさせるのか…と、自然の持つ力、そして子供たちの感じる力の豊かさを感じます。
お父様方が一生懸命にしてくださっていたことは、“火起こし”でした。火きり棒と火きり板の間からもくっもくっと出てくる煙の様子にあっという間に釘づけになる子供たち。煙があがっても、なかなか火種にならず、それでも繰り返し、繰り返し火起こしに挑むお父様方の背中から、皆は何を学んだのでしょうか。お父様方の背中に、そして火の神様に、“火がつくように…”と皆で気持ちを送っていると、火きり板の上がパッと明るくなりました。“ついた!”…気付いた途端、近くの子と手を取り合って喜んだり、拍手をしたり、表情を輝かせながら首を伸ばして火の様子を見たり。それぞれに嬉しさを表現する姿があちこちにあって、素朴な温かさが広がっていきました。

「みんななかよしの火」「すなおなこころの火」「こんきのよさの火」3つの火が合わさって火柱となると、そこから火の粉が空へと飛んでいきます。出発してから数時間。静かな森の中で美しい炎を見つめながら、自然と心が落ち着いていったのでしょうね。“いろんなことしたな”“きょう、たのしかったな”“おかあさんがいっていたこと、ほんとうだったな…”心の中が整って、「おもいで、できたな…」このつぶやきがこぼれたのではないでしょうか。



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さくら組 担任  情報ID 75168 番  掲載日時 07/20/2017 Thu, 16:16