校長の独り言【115】 



 今年度の学校基本調査(平成19年5月1日現在)の速報が文部科学省から発表されました。専修学校は全国に3,435校、その内訳は専門学校2,995校、高等専修学校520校、一般課程214校でした。特記すべきことは、専門学校は前年度比1校減でしたが、高等専修学校は34校減ということです。また、34校の仲間が廃校の決断をしたことになります。生徒数も高等専修学校4万人で前年度比2千人減少でした。この状況は少子化だけではないのです。なぜ、このような状況になってしまうのか、高等専修学校という学種は必要のない学種なのか、また、私の自問自答が始まりました。
 7月の本校公開授業の時の挨拶で述べましたが、専修学校制度が出来て30年余りが経過いたしました。この30年の歳月の中で高等専修学校こそが、時代の流れをいち早く察知し臨機応変に対応してきたと私は言えると思っています。
 1つ目は、中学浪人への対応です。
制度が出来た当初、15歳人口の多い時代であり、「15の春を泣かすな」の合言葉の中で、ある意味、高等専修学校は公私立高校に定員の関係で入学を断念した生徒の受け皿でありました。
 2つ目は、高校中退、不登校生徒への対応です。
やがて、教育界では、少子化、学力低下・不登校・高校中退・学級崩壊・犯罪の低年齢化等の問題が毎日のようにマスコミが賑わすようになりました。その時に、高等専修学校は、高校中退や不登校の生徒をいち早く積極的に受け入れ、職業教育を通して、社会人としての資質、職業人としての技術・資格を身につけさせ、実社会に送り出しました。そんな時に、当時、高等専修学校はサポート校ですかと言う質問が多かったことを覚えています。
 そして、このような問題解決のために、公立高校の改革が始まりました。東京でも都立高校改革という形で、新しいタイプの都立高校が誕生しています。中高一貫教育校(中等教育学校)、進学指導重点校、総合学科高校、単位制高校、チャレンジスクール、エンカレッジスクールがあります。その多くは、高校中退や不登校生徒の受け皿になっています。中には、無試験で、三部制の定時制の単位制高校であるエンカレッジスクールもあります。個人的には不登校の生徒がフレックスの学校に行っても、18歳の就職先でフレックスの会社は無いと思うのですが、さらには自動車整備士、調理師、福祉の高校や、さらに東京版デュアルシステムを導入した高校と、つまり都立高校の高等専修学校化が顕著に窺えます。これは、学習指導要領の適用外の高等専修学校が今ある教育界の諸問題に大きな教育効果を出している証であると私は考えています。
 3つ目は、特別支援教育への対応です。
平成19年度より国が推進しているものであり、小中学校において、通常の学級に在籍しているLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援を行う趣旨のものであります。
 この背景には、平成16年6月4日に公布された障害者基本法の一部改正により、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない旨が規定されています。
 この特別支援教育は、現段階では小中学校の義務教育段階のものですが、教育再生会議でも議論されているように、もうすぐ後期中等教育機関もその対象となるはずです。いかがでしょうか、現時点で、障害のある生徒が一人も在籍していない高等専修学校がありますでしょうか。私はないと思います。
 ですから、この点に関しましても、高等専修学校は高等学校よりも、早い対応をしているのです。
 以上のように、この30年、高等専修学校は様々な教育に関する問題に、後期中等教育機関の中で高等学校よりもいち早く対応しているのです。しかし、後から高等学校が追いかけてきて、追いつかれ、数の論理(学校数、知名度、授業料)により飲み込まれてしまっているのが現実です。
 このようなジレンマの中で、高等専修学校のこの独自性や個性を社会にどのようにアピール、発信していくかが急務であると考えています。
ですから、昨日と本日の二日に分け、本校の先生全員で手分けし、都内300校弱の中学校を訪問して、高等専修学校という学種の説明、本校の教育の説明を懸命に行っています。いままで機会ある毎に、高等専修学校の振興を行政等に訴えていますが、何も変化がない以上、自分たちで出来ることを懸命にやっているのです。
 高校に進んだ生徒だけが幸せになれるのではなく、高等専修学校に進んだ生徒も幸せになれるのです。このことを多くの中学生とその保護者の皆さんに分かってもらいたいだけなのです。


校長  情報ID 20560 番  掲載日時 08/30/2007 Thu, 13:00