校長の独り言【70】 



 著書『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』2002年より 
ご刊行の記念に寄せて
社団法人 東京都専修学校各種学校協会
会長 中込 三郎

 本書の著者である武蔵野東技能高等専修学校の清水信一校長は、ご多忙をきわめる校務のかたわら、私ども社団法人東京都専修学校各種学校協会の役員も務められ、献身的かつ幅広いご活躍により、会員校の先陣に立って協会諸事業の重責を担っていただいております。
 協会を構成する主要な学校群である専修学校は、学校教育法の改正によって昭和51年に施工された専修学校制度に基づく正規の学校です。専修学校は大きく三つの課程に分かれています。まず高校卒業者以上を対象とした専門課程、これを専門学校とよんでいます。そして中学校卒業者以上が対象の高等課程があり、これは高等専修学校とよばれています。さらに修業年限一年以上の一般課程があり、これは学歴不問の課程となっています。
 専門学校が大学・短期大学と並ぶ高等教育機関のひとつに列しているのに対し、高等専修学校のとくに3年課程は、後期中等教育機関における高等学校と同等の学校として位置づけられています。
 協会に属する部会に東京都高等専修学校部会がありますが、この副代表幹事でもある清水先生は、東京都中学校進路指導研究会(会長/高野康弘先生・世田谷区立用賀中学校校長)との連携団体となる、東京都中学校高等専修学校進路指導協議会(会長/関本恵一先生・練馬区立光が丘第三中学校校長)でも副会長を務められ、中学校と高等専修学校との相互理解のための中心的な存在としてご尽力いただいております。
 清水先生がお勤めの武蔵野東学園は、自閉症児と健常児との混合教育により、国内はもとより米国など海外でも注目されている学校です。なかでも武蔵野東技能高等専修学校は、学園内での最高学年を担っており、さらに中学校時代の不登校児や高校中退者なども受け入れ、より高度化した独自の混合教育を実践されています。そうした学校の校長というお仕事が、いかにより堅固な統率力と繊細な心配りを求められるか、余人である私どもにも安易に察することができます。
 学生時代から今も続けられているラグビーで、フォワードをされている清水先生の大柄で頑強そうな体格からは一見想像しにくいのですが、その細心の配慮、そつのなさには、日頃の協会でのご活躍ぶりから、常に模範とさせていただいております。
 このたびの本書の刊行は、協会としても大変よろこばしく、待ちかねておりました。
 高等専修学校は、すばらしい教育目的をもつ学校群ながら、一方でその存在が社会にいまひとつ浸透していないというジレンマも抱えています。中学校時代は不登校だった人、あるいはまったく目立たなかった人が、高等専修学校で学ぶうちに別人のようになった、そんな例は枚挙にいとまがありません。こうした事実をより広く社会に認知してもらうことが私どもの務めでもあります。
 武蔵野東技能高等専修学校が実践されている教育の数々が、日本の教育が迷い込んだ長い暗闇に光明をもたらし、また鋭い問題提起をしていることに疑いようはありません。
 熱血漢・清水先生のお人柄をうかがいながら、本書を通じて、夢をもつ生徒、その保護者のみなさん、また中学校ほか学校関係者の方々が、高等専修学校のすばらしさに触れ、最良の進路を見いだすきっかけになってくれることを願って止みません。

校長  情報ID 16581 番  掲載日時 12/18/2006 Mon, 11:38