校長の独り言【39】 



著書『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』2002年より
第四章 学校で一番大切なのは教師集団の「和」と「連携」 
○教師集団の合言葉「ナンバーワンよりオンリーワン」
 「ナンバーワンよりオンリーワン」、この言葉はある中小企業の皆さんが集まっている協会のキャチフレーズである。つまり、おいしい豆腐が食べたいとき、デパートに行って有名な高額の豆腐を買わなくても、どんなに小さなお店であってもおいしい豆腐を作り売っていれば、お客さんはバスに乗っても買いにくるという意味である。まさに本校の先生方が目指すところである。本校は開校して16年目の若い学校であるため当然歴史がない。そして、高等専修学校という知名度のない学種であること、小さな学校であること、15才で入学ができる後期中等教育機関ではあるが東京都内には都立、私立高校など約900校があること。このような状況の中で決して消極的な考え方でなく、「ナンバーワン」を目指すことよりも、本校でしか出来ない教育を展開することで「オンリーワン」になることができると信じ日々頑張っている。
 本校でしか出来ない教育。それは「混合教育」である。
 この混合教育というステージの上で、本校には「自分に自信がない生徒」、「夢をなかなか持てない生徒」、「高校を中途退学した生徒」、「自閉症という障害のある生徒」、「中学校時代まで不登校であった生徒」等と色々な個性と性格を持つ生徒たちが在籍する。その生徒たちがこのステージを大いに活用して一人の人間として成長することで、回りの多くの人々に愛される。さらに社会で必要とされる社会人となることが出来ると確信をもって話せるようにするには、我々教師が生徒を第一に考え、生徒のためになお一層の努力をすること、支援することで、東京都内約900校ある後期中等教育機関の中で「オンリーワン」になることができると信じている。そして「オンリーワン」となることで、本校を巣立った生徒一人ひとりは、胸を張って自分の母校を多くの人に語ることが出来るような気がする。
 「オンリーワン」となるべく日々懸命に先生方ががんばっている中で、現時点で誇れるのは、「進路指導の成果」・「高校中退者のやり直しの場」・「不登校生徒の成長」があげられると思う。
 「進路指導の成果」としては、まず健常児ではこの就職難の時代に、就職希望者全員がフリーターでなく正規に就職していること。また、自閉児の進路指導においては、企業就労率が全国平均を上回っていること。さらに卒業後のフォロー指導が徹底しているため定着率が高いことが上げられる。定着率に関しては、公教育においてはどうしても先生の転勤があるために、継続指導がしたくても出来ない現状があるようである。
 「高校中退者のやり直しの場」としては、毎年数人であるが編入学で本校に入学してくる生徒がいる。都立や私立の高校を中退して本校に入学する場合は、学校教育法上の位置づけの違いから編入学となる。この生徒たちは、さまざまな事情で最初に入学した学校を続けられなくなり、中途退学して本校にたどりついた生徒である。たどりつくまでにも、在籍を継続しての場合と在籍が一時中断して数年ブランクのある生徒とさまざまである。しかし、本校への編入学を契機に、自分の居場所として本校での前向きな学校生活を送り、苦労してきた分確実に成長している。


校長  情報ID 14964 番  掲載日時 09/28/2006 Thu, 13:04