校長の独り言【35】 



著書『ダメ人間はいない 学校で生徒はかわる』2002年より
第三章 新米校長のとらえている日本の教育の現状
○学校の役割って何
 教職に就かれている方はおそらく皆そうだと思うが、「学校の役割は何なのか」を常に自問自答しているはずである。知育、徳育、体育とバランスの取れた教育をするところとすぐに連想するが、実際は学校によって著しく偏りがあるのが現状のようである。都立高校も4校を特定し大学受験をメインにした学校作りを考えている。
 学校は、ミニ実社会でなくてはいけないはずである。子どもたちは学校を巣立った後全員が実社会で生活をすることになる訳であり、それから逃げる訳にはいかない。だから、学校は実社会で対応できる資質を身につける場であると思う。実社会にはいろいろな人間が共存している。しかし、学校に同じ個性、同じ価値観、同じ夢などをもつ生徒だけであれば、人間として全く成長できない訳ではないが、様々な個性、様々な価値観、様々な夢などをもつ生徒が学校生活の中で、心の通い合い、心のぶつかり合いがあり、笑い、泣く喜怒哀楽があってこそ人間としてより成長出来るのではないだろうか。一日の学校生活が終わった時に、今日も何も無く一日を終えたととらえる生徒がいるのであれば、学校は学校の役割を果たしていないことになる。
 また、本校への入学問い合わせで一番多いのは、高等専修学校故に「高卒の資格がとれるかどうか」である。学校は資格を取るだけの所ではない。しかし、このような声を数多く聞く度に、何か、自動車教習所で運転免許を取得する感覚と同じような気がしてならない。しかし、このような考えの人が富みに最近多いように感じている。高校中退者の大検受験者数の増加、通信制高校の生徒数の増加、それとインターネットスクールの出現、ホームスタディ制度の導入などがその証であり、学校という集団生活はともかく、高卒という資格だけはということである。
 本校のような職業教育を行い実社会に直結している専修学校だけでなく、学校は対象年令が違っても、実社会に子どもたちを送り出すのが役割であり、実社会で通用する資質をその時々に身につけさせることが役割であると私は考えている。

校長  情報ID 14838 番  掲載日時 09/22/2006 Fri, 15:42