美しい似顔絵になるように

Heart to Heart25 平成2633日発行

今年の11月には、学園創立50周年の記念式典が行われます。いわば学園の50歳の誕生日ということです。ここまでにはさまざまな産みの苦しみなどありましたが、多くの人に支えられて祝福の日を迎えます。私も学園の勤務生活が長いので、その成長の姿をまるで一人の人生を見るような気持ちで思い返しています。

これと同じように、私たちの歩みの中でも起伏の激しい経験をすることがあります。その時に経験するどんなに辛いことも楽しいことも、時は平等に流れて全てが過ぎ去っていくのですが、過去の記憶は決して同じ重さではありません。人心に残ものは事実ではなく思いの加わった心象です。その思いどうしても各人の傾向が生まれます。はつらつとした喜びでも、悲しみでも、同じ思いが習慣化された場合それが当人の生活に影響を与えるのは当然のことでしょう。日常の思い方を変えることは、案外人生そのものを変えていくキーポイントになっているのかと思います

石けんやシャンプーで見かける“Doveダヴ”に“リアルビューティスケッチ”というCMムービーがあります。FBIに長く勤めたという似顔絵の専門家が、あえて対象者の顔を見ずに、の特徴を質問しながら描いていきます。一枚は本人から聞いて描いた絵で、もう一枚はその人の特徴を他人から聞いて描いたものです。その結果は、何人もの似顔絵のどれもが他人の語りをもとにした絵の方が美しいのです。本人たちの表現による似顔絵は、実際より自信がなさそうだったり悲しそうだったり太めに誇張されたりしていました。どうも人は、自分の欠点にこだわりすぎるきらいがあるようです。他人の言葉をもとに描かれた自分の生き生きとした似顔絵を見てうなづき、涙を浮かべている女性の姿が印象的です。

さて、センターに通ってきている子どもたちはどんな記憶を積み重ねているのでしょうか。やはり多くの子どもたちが不安を強く持っていることは仕方のないところですが、それもセンターでの活動に取り組んでいく年月の経過とともに和らいできます。中には天真爛漫で揺らぎなく楽しそうに過ごしているお子さんも見かけます。一面的ではありますが屈託のないその姿はある意味で人生の達人を感じさせるものがあります。明るく楽しそうな表情や態度は人に安心感を与えますし、自然とその人の引きつけられていくものです。

もしも、私たちが走馬灯のように映る自分のこれまでの人生を見ることができたとするなら、どんな思いをもつでしょうか。流れてくる人生の映像に悔恨の情がわく場面もあるでしょうが、一方ではよくここまで来れたものだ、私も自分なりに結構頑張ってきたじゃないかそれぞれが思えるような気がするのです。足りないところは逃げずに受け止め、そして良いところもはっきりと自覚するという素直な心は、大人にとっても大事なことですね。

日々健気に頑張っている子どもらに寄り添って歩んでいる私たち。自分表現で描いてもらう似顔絵が美しいものになるように、お互いに我が人生を幸せに感じ自信を持って生きていきたいものです。

  

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