お正月におせち料理を

Heart to Heart24 平成25122日発行

最近我が国をにぎわしている報道の中に、食品の偽装表示があります。食材の名称や産地を偽っていたことの謝罪会見が、連日のようにニュースに取り上げられました。やはり生活の基本たる「食」の問題には敏感にならざるを得ません。

食卓を囲む状況もここ数十年で大きく変化しました。大勢の家族が一緒に食事をしていた時代から、核家族化に加え共働きの多い時代になって、食事はそれぞれにという家庭も増えてきました。パンと牛乳、ハンバーグやスパゲッティという欧米スタイルは、日本人にとって今や何の違和感もありません。海外との流通が活発になるにつれて私たちが口にする食材は大幅に増え、嗜好も変化し、善し悪しは別にして、今は食文化なるものが一口には語れない時代になっています。

さて、私たちが何気なく口にしている食べ物は、体の健康のみならず精神にも影響を及ぼしている大きな存在です。人間はその人が食べた物そのものであるとも言われます。近年日本の和食が健康食ということで西欧諸国にもよく知られるようになり、ユネスコの無形文化遺産には「日本の伝統的な食文化」として登録される見込みになりました。ただし当の日本人は、和食本来のすばらしさを正当に評価できていないのかも知れません。

正月が近づいてくると「おせち料理」の食材がスーパーなどに一斉に並びます。日本の正月らしさを際立たせるこのおせち料理には、それぞれに縁起をかつぐ意味も込められています。調べてみますと、そもそもは年神様をお迎えし、健やかで幸せな一年を祈りながら食する料理で、年神様を物静かにお迎えするために日持ち料理にして三が日は煮炊きを控えたのだそうです。

以下に、いくつかの料理と栄養面の“売りどころ”を並べてみましょう。

【黒豆】…良質なたんぱく質。疲労回復、抗酸化作用、美肌効果、目の疲労防止作用も。【ごまめ】…イワシの稚魚の佃煮。骨を丈夫にするカルシウム、味覚を正常にする亜鉛などミネラルが豊富。【なます】…子どもには多少不人気かもしれないが、ニンジンは野菜の優等生。カロチンはのど、鼻の粘膜を丈夫にし風邪を予防する。消化酵素を含む大根はまさに胃腸薬。【昆布巻】…豊富なカルシウムと水溶性の食物繊維。身体や知能の発育を促進するヨウ素が多く含まれる。【栗きんとん】…ビタミンも食物繊維も豊富。黄金の色は金運を開く?

他にも数の子に紅白かまぼこや伊達巻といろいろです。効能だけが食事の要素ではありませんが、おせち料理は野菜、海草、豆、芋その他海山の幸たっぷりで、バランスの良い和食、健康食と言えます。和食から遠ざかりがちな今の子どもたち、とくに好き嫌いの多いお子さんには日々苦労されていることと思いますが、年の初めに少しだけ威儀を正してお子さんとおせち料理を食し、伝統的な食文化を伝えることも大切なことかと思います。どうぞ一年の健康を食から始め、新年を素晴しい年になさってください。

 

 

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