環境が変化する時期に

Heart to Heart19 平成2333日発行

2012年も早や3月に入り、年度の切り替わりの時期を迎えています。保護者の皆さんにとっても、お子さんの幼稚園や学校のことについて気をもんだり、次年度の準備に慌しい思いをする時期ではないでしょうか。担任の先生が変わることは大きな影響があるでしょう。入園・入学や中・高等学校への進学になると、さらに大きな変化になります。入学する学校が子どもに合っているだろうか、本人がうまく慣れてくれるだろうかなどと心配にもなります。また学区制や特別支援学級、通級のことなど、基本的な学校教育のシステムを調べたり、実際に学校を見学し個人的に相談したり、さらには子どもがスムーズ慣れるように、事前に幼稚園や学校までお子さんと足を運ぶ方もいたりするかと思います。

さて、発達障害の子どもたちが新しい環境になじんでいく様子にも苦労が見られます。とくに自閉症児の、変化に対する抵抗感の強いことはよく言われることです。しかし教育の現場から見ると、その障害特性さえも大きく緩和され得ることが分かります。彼らが環境の変化に順応する力を得ていくことは、日常の中に見られます。考えてみると、抵抗感が強いことには意識が集中しているはずです。彼らはその抵抗感をあちらこちらに持っていますが、逆に本人の苦手なことを受け入れられたときには、普通にはそんな些細なことでと思われるようなことでも、大きな自信を彼らにもたらしていることが察せられます。そんなときには、本人が生き生きとしていて他の活動にもよく進歩が見られます。この小さな積み重ねが、彼らの弱いところを少しずつ改善させていくことになります。変えていくという行為に少しずつ慣れ、それらを乗り越えるコツのようなものを会得していくわけです。

ところで、子どもたちの環境が変わることで、彼らのネックになっている思い込みがスッと外れることがあります。環境の変化が教育的チャンスにもなるのです。そのことでよりよい習慣づけをするきっかけもできます。ですから環境が変化せざるを得ないときには、お子さんに前向きな暗示を与えるようにすることが大事です。日常において、環境の変化を積極的に活用して彼らの思い込みを転換させてしまうという発想は、案外有効な手立てになるのです。

教育センターの担当の先生が変わったり、今までと違うプログラムを受講することも、全て彼らの経験を広げるよい刺激になります。どうぞこの時期には、子どもたちに新年度への期待を大きく膨らませてあげて、新しいことに挑んでいく気持ちを育てていただきたいと思います。

 

 

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