大震災を経験する中で

Heart to Heart17 平成2379日発行

3月11日に起きた東日本大震災は、被災した地域のみならず、直接津波などの被害に会っていない、ここ東京近隣に住む人たちの生活にさえ、今なお影響を与え続けています。

確かに私たちは今、世界的に地震、火山、洪水、竜巻などの災害が起こっている、きわめて不安定な状況の時代に、生きているということを認識せざるを得ません。 

ところで、先の大地震では東京も大きく揺れ、教育センターで受講していた子どもたちは、スタッフの先導で保護者の方共々校庭に避難しました。当日交通の事情で帰宅できなかった親子10名ほどの方々は、北原記念館内に一泊し翌日帰られています。当教育センターでは、これまでに小学校の訓練日に合わせて避難訓練を実施していましたが、子どもたちは、大地震の当日もスタッフの指示に従って、落ち着いて行動できました。教育センターでは、今後とも引き続きスタッフの災害時の対処や訓練、また緊急避難的なことを含めて、備えを進めていきます。

いつ何が起こるかは、私たちには予測できないことです。しかしながら、このようなことが起きた時に、気が動転してしまうことのないような心構えは、ご家庭においても最低限必要で大事なことです。不安動揺の想いを持ち続けることが、心身によい影響を与えるわけがありません。実際、東京に住んでいる人で、震災後、地震への恐れから体調を崩して入院された方を、私は知っています。常に、より確かな情報や備えが必要であることは論を俟ちませんが、先の分からないことに対しては、何があっても大丈夫!などと多少開き直って、どっしりと構える気持ちを持つことも必要かと思います。

一方、この大震災により人々の意識が変わってきたということをよく耳にします。私自身、宮城や福島の方々とお会いする機会がありましたが、その時に「でもこの震災があってから、隣近所の人たちが今までと違う人かのように、優しくなったのよね!」とおっしゃった方がいました。皆さんも大きく頷いて、大笑いされていたのが印象的でした。被災地に近い方々なので尚更なのだとは思いますが、そうした優しさが、国内外に、さまざまに広がっていくことを期待したいものです。

さて、子どもたちは、暑い中連日元気に教育センターに通ってくれています。まさに、この子どもたちの屈託のない明るさが、世の中の浄化力のようにも感じられてきます。文明社会と言われるこの社会も、今やあちらこちらに歪みを生み出して、環境破壊、経済混迷、原発騒動などと、重苦しい空気が生活空間を漂っています。しかし、日々子どもたちと接していると、人間のエゴや思慮の足らなさが作り出した世の中の歪みなどには我関せずで、むしろ今の社会の在り方を私たちに問いかけているかのような、アッケラカンとしたたくましさを彼らに感じてしまいます。一歩々々学んでそこに喜びを見出すという、とてもシンプルで素直な人間の姿は、私たち大人こそ学ぶべきことかもしれません。この子どもたちの将来のために、今こそ、住みよい社会への切り口を見出し、押し開いていかなければならないことを思います。

 まもなく夏休みに入りますが、保護者の皆さんにとっては、長くてため息が出そうという方もおられるでしょう。ただ子どもたちには、気持ちもゆったりと、自由に活動する時間が多く、この時期に身長が伸びたり、言語やコミュニケーションの幅が広がってきたりするお子さんも少なくありません。どうぞこの夏休みを貴重な時間ととらえて、活動的また健康的に過ごしていただきたいと思います。  

 

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