子どもの自意識を育てよう

Heart to Heart12平成21124日発行

 今年もいよいよ押しつまり、教育センターではあちらこちらからウィンターソングの歌声が聞こえてきます。スタッフルームに時折顔を出す子どもたちの中には、もう何年も通っているお子さんもいます。その様子を見ていると、通い始めの頃のことが思い出されてきます。

今はすっかり落ち着いているお子さんが、最初の頃よくパニックを起こしていたことなどを、当時の様子を知らないスタッフに話すと「今のA君には考えられないですね!」とびっくりします。目立つパニックを起こすような子どもではなくても、いろいろな変化が見られます。たとえば少しもじっとしていられずに動き回ったり、頭に浮かぶことばを次から次へと口に出して、自制できなかったりしていたお子さんが、グループの当番の仕事で来た折に、落ち着いた動作で用事をこなしていたり、急に受けた質問に混乱する気持ちをぐっと抑えて返答したりしています。そのことを先生に褒められ、「失礼しました!」とあいさつをして帰っていく態度や表情を見ていると、本人の自意識がよく育ってきているなと感じるのです。そしてスタッフルームでは『A君、しっかりしたねー』などと、ひとしきり話が盛り上がったりします。

さて、私たちが発達に障害のある子どもと関わっていく時に、意識も行動もその全てを障害のせいにして片付けていないか、気を付けなければなりません。私たちは、この子どもたちのさまざまな発達上のつまずきのために、遅れている部分やできないことなどマイナスの行動面ばかりが 目について、子どもの意識がどこを向いているかということを、つい見逃してしまいます。子どもがどんな状態であっても、動いている心というものがあるのですから、成長のための突破口は必ずあります。遊んでいる姿や作業に取り組む姿を冷静に見てみると、身体の動き、表情、目のかがやきなどに、関心や認知度のさまざまな反応が表れています。彼らの意識はしっかりと働いているのです。

教育センターに通っている子どもが、少しずつ自信をもって他人と関わり行動できるようになる根底には、「ぼくを認めてくれている、わたしをわかって大切に思ってくれている」という本人の感覚や思いが横たわっています。つまり、何か安心できる雰囲気を感じているのです。安心できてわかりやすく接してくれる人のことばは、胸にとどきます。この安心感のバリアの中でさまざまな刺激を与え、できることやわかることを増やしていくわけです。

この子どもたちには、不安にともなう情緒の不安定さ、自信のなさ、依存心などがつきまといますが、それらも自意識が育っていくためのプロセスの一駒です。教育センターでは、こうした子どもの不安定な心とともに、自尊感情をも大事に受け止めて、具体的な一つひとつの課題にトライさせています。この継続が、不安の強い心に意欲を芽生えさせ、新しい場面にも怖じないような強い心を育みます。日々の小さな自信のつみ重ねが、自意識を高めていくのです。ご家庭においても、子どもたちに笑顔が増え、日常の生活に張り合いが持てるようになることを目ざして、一歩一歩進んでまいりましょう。 

年の暮れ、そしてお正月ももう間近です。どうぞご家族でよいお年をお迎えください。

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