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今、身につけてほしい 校長 石橋 恵二 今年度から世田谷区の小学校と中学校で「日本語」という教科が設けられました。教育特区としての扱いで、小学校は週1時間、中学校は週2時間の授業です。小学校では短歌や俳句のほかに古文・漢詩・論語などを音読して日本語の美しい響きやリズムを楽しみ、中学校では「哲学」「表現」「日本文化」の3つの領域から学習を進めるそうです。たいへん興味深い取り組みです。私は今までに幾人かの学者や教育の専門家の「これからの日本の教育について」の講演を聞きましたが、それぞれの話の中で共通して言っていたのは「古典を読むこと」「原文を読むこと」ということでした。それによって文化を感じ、歴史を知って、今の世の中や問題を考えていけるのだというわけです。 テレビでたまたま世田谷区のこの取り組みを報じているのを見ました。小学生が古文を読んでいる授業でした。その文の意味を読み解くのではなく、音読して「当時の言葉はこんな感じだったのか」といったことを知るねらいで、ここからどのように発展していくのかがとても気になりました。中学生にはどのように扱われるのかは詳しくわかりませんが、この「日本語」の授業は中学3年生には行わないのだそうです。移行措置として今年度は行わないのか、3年生で高校受験があるので行わないのかは知りません。私としては、必要と考え設置した教科ならば、3年生にも授業があってほしいです。本校の「生命科」は3年生であってもやっていますし、3年生だからこそ、15歳だからこそ考えてもらいたい内容があるからです。 毎年、本校には教育実習生がやってきます。東の卒業生には教員志望の者が多く、受け入れに苦労もありますが、立派になって帰ってきてくれた卒業生を喜んで受け入れています。その実習生たちが実習を終えて何日かすると、必ずお礼の手紙が届けられます。封を私はドキドキしながら開けます。どんなことが書いてあるのかという楽しみではありません。内容というよりも、社会人になろうとしている者たちの手紙の体裁が整っているのかが心配になるのです。起首・結語、前文の時候のあいさつはどうか、後付の日付や宛名の位置や文字の大きさの違いはどうかなどに目がいってしまいます。彼らの手紙を見て、いつも最後にはホッとするのですが、こうした手紙の書き方をちゃんと学校で自分たちが指導していたかを、つい振り返ってしまうのです。小学生でも中学生でも国語の授業で「手紙の書き方」を教える時間があるはずですが、おそらく彼らは大学でこうしたことをしっかり指導されているのでしょう。 江戸時代では12歳で「主の代わりに手紙を書く」ということが求められていたようですが、今のように社会人や大学生になって書き方をあらためて知るのではなく、こうしたことは中学生の今、身につけておきたいことです。「実学」をとても重んじた時代がありました。学力と少し前にブームとなった心の偏差値「EQ」、そして生活力とか「実学力」といえばよいでしょうか、この3つのバランスをしっかり身につけなければいけません。私は、こうした実生活で身についておくべき力や能力があるかどうをぜひ入試で出題してほしいと思います。夏休みはじっくり自分自身を肥やしていく時です。学力や体力だけでなく、実学的な力も蓄えていってほしいと思っています。 |